低烈度紛争

低烈度紛争

低烈度紛争(Low Intensity Conflict,)とは、戦争状態には至らない範囲で行われる紛争であり、反乱、政権の転覆、テロリズム、ゲリラ、暴動などを行う勢力に対し、それを妨害、防止する活動が行われると想定される。

概要

低烈度紛争は交戦主体が行使する武力がどれだけの規模、程度なのか、つまり烈度(intensity)によって相対的に判断されるものである。低烈度紛争ではレジスタンス、パルチザン、ゲリラ、反体制派、テロリスト、あるいは単に犯罪組織と位置づけられる勢力との交戦が想定されており、正規軍同士が組織的に遂行する高烈度紛争(High Intensity Conflict)と対置されている。しかし、エスカレーションによって低烈度紛争が高烈度紛争に移行する場合もあるため、両者の間に明確な境界が存在するわけではない。また低烈度紛争に類似する概念として非正規戦争(irregular war)がある。これは低烈度紛争と同じ事例に対して用いられることがあるが、厳密には同じ意味ではない。非正規戦争は交戦主体が正規軍ではない戦争に用いるが、低烈度紛争は交戦主体よりも交戦の方法によって規定されるためである。

低烈度紛争の概念を最初に使い始めたのはKitson(1971)だが、彼は「低烈度紛争」ではなく、「低烈度作戦(Low Intentsity Operations)」という言葉を使っており、対反乱作戦や平和維持作戦のような小規模な武力の使用によって特徴づけられる軍事作戦を指して用いていていた。この概念を整理したSarkesian(1988)は、非通常戦争(unconventional war)というカテゴリーを置き、その戦争で繰り広げられる彼我の相互作用を一方については特殊作戦(special operations)、他方では低烈度紛争と呼び分けることを提案した。1980年代にアメリカ軍ではこの用語を公式に使用しており、「政治的、軍事的、社会的、経済的、心理的な目標を達成するための限定された政治的、軍事的闘争である。それはしばしば長期化し、テロリズムから反乱に至る外交的、経済的、心理的圧力を包括する。低烈度紛争は一般に地域、武器、戦術、暴力の程度が制約されていることに特徴づけられる」と定義した(U.S. Department of Defense 1985)。

参考文献

  • Kitson, F. 1971. Low-Intensity Operations: Subversion, Insurgency, Peace-Keeping. London: Faber and Faber.
  • Sarkesian, S. 1988. The Myth of U.S. Capability in Unconventional Conflicts, Military Review, September, pp. 3-17.
  • U.S. Department of Defense. 1985. Memorandum SM-793-85 of the Joint Chiefs of Staff.