リチャードソン

リチャードソン

ルイス・フライ・リチャードソン(Lewis Fry Richardson, 1881年10月11日 - 1953年9月30日)はイギリスの気象学者である。軍事学の領域では軍拡競争の数理モデルや戦争の統計的分析によって知られている。

経歴

イングランドのニューカッスル・アポン・タイン出身。プロテスタントの一派であるクエーカーの家に生まれ、1903年にケンブリッジ大学キングス・カレッジで学業を終え、いくつかの教職を渡り歩いた後に1913年に気象局観測所で所長に就任した。1914年に第一次世界大戦が勃発した際には、信仰上の理由から兵役を拒否したが、クエーカーの信徒などによって編成された友愛救急部隊(Friends' Ambulance Unit)の一員として西部戦線で活動した。終戦後、新設されたイギリス空軍が気象局を傘下に置くことになったため、1920年にウェストミンスター・カレッジ(Westminster College)に転職した。1929年にはペイズリー・テクニカル・カレッジの校長に就任し、1940年までその職にあった。スコットランドのアーガイル・アンド・ビュートにて死去。

業績

軍拡競争の動態を説明、予測するための数理モデルを構築した功績で高い評価を受けている。このモデルは軍事学の文献でリチャードソン方程式(Richardson equation)と呼ばれている。それは連立微分方程式の形をとっており、一方の国が軍備を増強するために財政支出を増やせば、他方の国も対抗して軍備を増強するために財政支出を増やし、それが両国の経済を疲弊させる効果をもたらしながら、時間が進行するにつれて事態がエスカレートしていくことが予測されている。地理的要因の効果を省略し、また配備する装備体系の種類を1種類に限定したモデルであるため、実証的な妥当性には問題が多い。しかし、1930年代に軍拡競争のダイナミクスをいち早く理論化し、その後の研究の足掛かりを作った意義は大きい。