海軍

海軍

海軍(navy)とは海洋、河川、湖畔などの水上および水中において作戦を遂行する軍事組織であり、陸軍、空軍に並ぶ基本的な軍種の一つである。英語で海軍を意味するnavyはもともと軍事的目的に限らず船舶全般を意味していたが、現在では軍事的な意味で限定されるようになっている。

海軍の基本的な任務は航路を安全に利用できる状態を維持することである。船舶が原料、食料、燃料などの輸送に従事する際に、その貨物が洋上で海賊や敵国に奪取される事態は古来から起きている。島嶼国のように外部との交流を全面的に海運に依存する国にとって、これは甚大な損害であり、これを防止するために海軍が必要になった。したがって、どの国の海軍も海運を含めた海洋産業と歩調を合わせながら発達することが歴史的にも多かった。

このような解釈は19世紀のアメリカの海軍軍人アルフレッド・セイヤー・マハンによって示されたものであり、現在でも海軍の任務を理解する上で有益なものである。さらにマハンは海軍の任務を政策の観点から考察するだけでなく、戦略の観点からも分析し、それは敵対する海軍の主力艦隊を撃滅することであり、それ以外は二次的な任務に過ぎないという見解を提示した。それによれば、海路に対して脅威を及ぼすあらゆる勢力を海上から一掃して優位を確立することが海軍の役割であり、海軍の編制、装備、作戦などはその役割に寄与するように考慮されていなければならないと考えられていた。戦略学の見地から見て、このマハンの立場は艦隊決戦の意義を強調するものと整理できる。

このようなマハンの立場に対して、より広い視野で海軍の任務を分析する研究者もいた。その一人がイギリスの海軍史家ジュリアン・コーベットである。コーベットの見解によれば、海軍の任務は必ずしも艦隊決戦によって絶対的な海上優勢を確立することだけではない。なぜなら、どのような政治的目的を達成するために武力を行使するかに応じて、作戦の方針、そして海軍が担うべき役割もさまざまに変化するためである。積極的に敵の艦隊に攻撃を加えて制海を確立するという任務も考えられるが、あえて消極的な姿勢をとり、特定の海域で敵の艦艇や船舶が航行することを拒否するに留まる任務も想定されなければならない。さらに海軍の任務を陸軍の任務と切り離して理解することも偏った見方であり、海軍は必要に応じて陸上部隊を輸送、揚陸しなければならない場合もある、とコーベットは指摘した。

海軍に関する組織、法令、戦略、戦術、装備、技術は時代や地域によって大きく異なる。海軍基地も参照されたい。