ハンチントン

ハンチントン

サミュエル・ハンチントンSamuel P. Huntington, 1927年4月18日 - 2008年12月24日)はアメリカの政治学者であり、国防政策、政軍関係、軍事戦略の研究成果で知られている。

経歴

ニューヨーク市出身。業界紙の出版業を営むリチャード・ハンチントンと小説家ドロシー・サンボーンの間に生まれる。18歳でイェール大学を卒業し、アメリカ陸軍に入隊するが、短期間で学業に戻り、シカゴ大学で修士の学位を、ハーバード大学で博士の学位を取得し、同大学で1959年まで教鞭をとった。アメリカの政軍関係を分析した『軍人と国家』(1957)はこの時期に書かれている。1959年にコロンビア大学に移ったが、1963年にハーバード大学に戻り、終身在職権を得た。1968年に刊行した『変動期社会の政治秩序』では当時の近代化理論の定説を批判し、大きな論争を起こした。『第三の波』(1991)では民主化の問題を取り上げ、冷戦後に体制変動が世界的な規模で連鎖した事象を分析した。1993年に国際政治で「文明の衝突?」と題する論考を発表し、冷戦後の国際関係ではイデオロギーによって分断されるのではなく、文化的価値観によって分断されるようになる可能性を指摘した。マサチューセッツ州で死去。

業績

軍事学の立場で重要な業績は政軍関係の理論であり、軍隊の効率を高める上で軍事的プロフェッショナリズムを育む制度的な基盤を整備することの重要性が指摘されている。具体的には、国家に対する軍隊の組織的活動に専門的自律性を備えさせることが重視されている。冷戦以降の軍隊が達成すべき任務の質的変化を踏まえ、異なる形態の政軍関係の形成を目指すべきと主張したモーリス・ジャノヴィッツと論争している。

The Soldier and the State: the Theory and Politics of Civil-military Relations, Harvard University Press, 1957.(市川良一訳『軍人と国家(上・下)』原書房、1978年)

The Clash of Civilizations and the Remaking of World Order, Simon & Schuster, 1996.(鈴木主税訳『文明の衝突』集英社、1998年、集英社文庫、2017年)