ヘロドトス

ヘロドトス

ヘロドトス(前484年?- 前430年以降)はギリシアの歴史家であり、「歴史の父」として名高い。ペルシア戦争の歴史を語った『歴史』の著者として知られている。

経歴

ハリカルナッソス出身。リュクセスの子として生まれる。詳しい経緯は明らかではないが、ハリカルナッソスで独裁者リュグダミスに対する反乱が起きた際には、反徒として関与した。反乱は失敗に終わり、従兄弟のパニュアッシスが命を落としている。そのため、ヘロドトス自身もサモス島に逃れることを余儀なくされた。しばらくサモス島で暮らしていたが、ハリカルナッソスで再びリュグダミスに対する反乱が起こり、独裁制が打倒されると帰国したが、やがて各地を巡る旅に出た。前445年前後にはアテナイに入国し、政治家ペリクレスと交友関係を結んだ。前444年にペリクレスの提案でイタリア南部の植民市トゥリオイの建設事業に参加した。その後の足跡は分からないが、トゥリオイで市民権を取得し、同地で没したと考えられる。

著作

ヘロドトスの『歴史(ἱστορίαι)』はペルシア戦争(前546年頃 - 前448年頃)の歴史を描いた古典的史書である。ペルシアが帝国として勢力を拡大し、次第にギリシアと対立を深める過程が詳細に述べられている。イオニアで起きた反乱をきっかけとして、ペルシアとギリシアの勢力が激突するに至った経緯を述べる。ペルシア軍のギリシア侵攻は2度実施されるが、ギリシアの軍事的抵抗を受けて頓挫し、最終的に失敗に終わった。『歴史』はペルシア戦争の歴史を知る上で最も貴重な資料を残しただけでなく、古代ローマの政治家キケロにヘロドトスを「歴史の父」と評価させた優れた著書であり、軍事史だけでなく、歴史学全体の発展に大きく寄与した。