コミーヌ

コミーヌ

フィリップ・ド・コミーヌ(Philippe de Commynes, 1447年 - 1511年?)はフランスの政治家である。『回想録』の著者として知られている。

経歴

1447年、フランドルで貴族の家に生まれた。1464年にブルゴーニュ公シャルル・ル・テメレールに仕官し、対外政策の問題を任された。1472年にフランスに移ってルイ十一世に仕え、そこで顧問官として登用された。コミーヌは財政や外交で成果を積み重ね、ルイ十一世から厚い信頼を得ていた。しかし、1483年に国王に即位したシャルル八世との関係は悪く、自分の地位や財産を脅かされ、投獄されることもあった。しかし、外交官としてのコミーヌの能力や人脈には利用価値があったため、1493年にシャルル八世は出獄を許し、イタリアに使節として派遣した。1489年頃から『回想録』(1489-1498)の執筆を開始し、当時のヨーロッパの政治情勢について記述しているが、シャルル八世の政策に対する評価は否定的なものだった。

コミーヌは1494年から1年にわたってイタリア戦争に従軍し、そこで知ったことも『回想録』で記録されていき、1498年に完成した。国王に対して批判的な内容が含まれていたことから、生前に原稿が印刷されることはなかった。コミーヌは1511年頃にポワトゥーで死去したが、彼の著作は1524年にパリで出版された。この著作は16世紀の知識人から叙述の完成度と客観性の面で高く評価されることになった。16世紀のフランスの哲学者ミシェル・ド・モンテーニュは、カエサル、ポリュビオスに並べてコミーヌを軍事の権威と評価しており、マキアヴェリの業績をそれに次ぐものとして位置付けている。軍事学史において、16世紀のヨーロッパの軍事思想の潮流に影響を及ぼした人物の一人として位置付けることができる。

業績

コミーヌの著作『回想録』についてはフランス語で新しい版もいくつか出ているが、2011年に英語の翻訳が出ているため、ここではそちらを示しておく。日本語にはまだ翻訳されたことがない。

  • Philippe de Commynes. 2011. The Memoirs of Philip de Comines Lord of Argenton Containing the History of Lewis XI & Charles VIII Kings of France with the Most Remarkable Occurrances in Their Particular Reigns from the Year 1464 to 1498. Eebo Editions, Proquest.(英語)