イブン・フザイル

イブン・フザイル

イブン・フザイル・アル・アンダルシ(Ibn Hudhayl al-Andulsi, 14世紀?)はナスル朝グラナダ王国に仕えた人物である。詳しい身分や経歴は不明だが、スルタンのムハンマド五世(在位1354 - 1359, 1362 - 1391)の命によって戦争術に関する著作を書き残した。その後、新たに即位したスルタンのムハンマド七世(在位1392 - 1408)のために、論文を改定している。著作では軍司令官を読者に想定し、警戒措置や情報収集の重要性、布陣する際に注意すべき地形や欺騙の有効性について一般的に解説しているだけでなく、戦場で戦列を構成する際には中央に最も勇敢な兵士を配置し、敵の正面攻撃に対しては両翼包囲をもって対処するなど、具体的な戦術の解説も盛り込まれている。また著作の後半には馬術や剣術に関する解説もあり、当時のイスラーム世界の軍事学の研究状況を知る上で貴重な資料である。イブン・フザイルの著作は20世紀にフランスで翻訳されているが、論文の前半は1939年に、後半は1924年に分けて刊行された。以下にその文献情報を挙げておく。

  • Ibn Hudhayl. 1939. Ornement des âmes et la devise des habitants d'el Andalus. Trans. Louis Mercier, Paris: P. Geuthner.
  • Ibn Hudhayl. 1924. La parure des cavaliers et l'insigne des preux. Trans. Louis Mercier, Paris: P. Geuthner.