ウェゲティウス

ウェゲティウス

フラウィウス・ウェゲティウス・レナトゥス(Publius Flavius Vegetius Renatus, 4世紀?)は4世紀のローマの軍事学者である。

ローマ軍の制度や運用を論じた『軍事概論(Epitoma rei militaris)』(4世紀)の著者として知られている。生年没年を含めて経歴は明らかになっておらず、上流階級の出身だったと推測されているにすぎない。著作にはウァレンティニアヌス二世(在位375年 - 392年)に捧げるという献辞があるため、執筆は4世紀後半と見積もることができる。ウェゲティウスの狙いは当時、危機的な状況にあったローマ帝国を立て直すため、古来のローマ軍をモデルとした改革を推し進めることにあったようであり、その著述は1世紀から2世紀の史料に依拠しているようである。ただ、その取扱い方に関してはさまざまな問題点があることが指摘されている。それにもかかわらず、ウェゲティウスの著作は中世から近世のヨーロッパにおいて大きな影響力を持っており、特にマキアヴェリは自著の執筆の際に多くの議論をウェゲティウスの著作から参照している。

思想

ウェゲティウスの『軍事概論』は4篇から構成されている。第1篇では、どのような人物を兵士として選抜すべきなのか、新兵をどのように訓練するのか、部隊として必要な規律はどのようなものかが述べられている。第2篇はローマ軍の編成と運用で重要な位置を占める軍団(レギオン)について解説されており、軍団は10個大隊(コホート)で編成されており、定員は6,100名の歩兵と726騎の騎兵であることなどが述べられている。第3篇は部隊の運用について説明するものであり、部隊で戦列を組む際には風向きや粉塵、さらには太陽の位置など細かく部隊の状況に配慮する必要があるといった細かな注意事項や、戦列を組む際に戦闘正面を広げすぎて縦長区分を確保することを軽視してはならないなどの指針が示されている。非常に粗雑な内容ではあるが、この篇には一般的な原則も述べられている。第4篇は攻囲と海上戦について記述されている。例えば、防壁で身を守る敵をどのような装備を使って打ち倒せばよいのか、航海でどのような風向きが望ましいのかなどの論点が出されている。

業績

ウェゲティウスの『軍事概論』はラテン語で書かれており、日本語の翻訳は見当たらないが、英語の翻訳で読むことができる。

  • Vegetius. 2011(1993). Epitome of Military Science. N.P. Milner, Trans. Vol. 16, 3rd edn. Liverpool: Liverpool University Press.