サックス

サックス

エルマン・モーリス・ド・サックス(Hermann Maurice de Saxe, 1696年10月28日 - 1750年11月20日)はドイツ出身の軍人である。フランス陸軍元帥に上り詰め、軍事学の方面においても『我が空想』の著者として知られている。

経歴

1696年、ザクセン選帝侯のフリードリヒ・アウグスト一世の庶子として生まれた。12歳の時にシューレンブルク将軍の後見で少尉候補生になり、オーストリア陸軍に入隊した。翌年にはスペイン継承戦争に従軍することになり、フランドルやポメラニアに出陣した。その才覚が認められ、17歳の若さで騎兵連隊の指揮をとるまでになった。1717年、21歳の時には名将として名高いオーストリア陸軍のオイゲン公に連れられて対トルコ戦に従軍し、ベオグラード攻囲に加わった。しかし、野心家のサックスにとってオーストリアに留まることは将来性に欠けると思われたため、1720年にフランスに移り、宮廷の人脈を利用して少将の階級を手に入れた。

サックスはフランスの宮廷で高位の女性との結婚を目論むなど、その政治的野心を満たす道を探っていたが、いずれの策もうまくいかなかった。しかし、1733年に勃発したポーランド戦争、1740年のオーストリア継承戦争においてサックスは目覚ましい軍功を上げ、フランスの王室に接近する道が開かれた。当時、ルイ十五世の寵愛を受けていた愛人ポンパドゥール夫人は、政界で強い影響力を持っていたが、彼女はサックスを軍人として高く評価し、大将に昇進させるように手助けした。1745年から1748年にかけてサックスは一軍を率いてオランダに進攻し、その功績で元帥に昇進し、ルイ十五世から公位とシャンボールの領地を与えられた。1750年に居城で死去した。

サックスは軍事学に関する独自の見解を持っていたが、その内容をまとめた原稿は生前に出版されなかった。死去してから7年後の1757年に『我が空想』という表題で出版されている。この著作は戦争術に関する研究として18世紀のヨーロッパで広く読まれ、フリードリヒ二世などの読者を得た。

業績

サックスの著作『我が空想(Mes Rêveries)』(1757)はフランス語で書かれているが、多くの言語に翻訳されており、出版直後に英語にも翻訳された。

Saxe, Maurice de. 1985(1757). My Reveries upon the Art of War, in Phillips, Thomas R. Roots of Strategy. New York: Stackpole Books, pp. 177-300.