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作戦(operation)とは、戦略上の目標を達成するため、戦術上の手段を適用する方法をいう。以下では、作戦の概要、定義、研究のための文献などを案内する。
もともと作戦という言葉は、動作や働きを表すopeと、それを動詞化するate、そして動詞を名詞化するionの組み合わせで成り立っている。そのため作戦は、一般的に軍隊の行動のことを全般的に指しているが、軍事学の概念としては戦略よりも下位、戦術よりも上位に位置づけられる部隊行動を指すために使われている。その戦略や戦術の後で確立された概念であり、20世紀の初めにロシアで作戦術(operational art)という概念が導入されたことにまでさかのぼる。ただし、作戦術という概念が確立される以前から、戦争の遂行において作戦レベルが重要であるという認識はあり、例えばヘルムート・フォン・モルトケの思想で作戦の原型となる考え方が展開されていたことが指摘されている(論文紹介 参謀総長モルトケの戦争術と作戦術の原点)。
とはいえ、全般として作戦術の研究が特に進んだのはやはりロシア(その後のソビエト連邦)であり、西側がその概念の重要性を認識するようになるのは1980年代前後まで待たなければならなかった(論文紹介 米陸軍がソ連軍の作戦術を取り入れた理由)。戦略では、ある政治的目的を達成するため、軍事的手段をどのように運用するかが問題となるのに対して、作戦では、戦略によって与えられた目標を達成するために、部隊をどのように運用すべきかを問題とする。言いかえれば、戦略の研究は絶えず政治的観点から部隊の運用を包括的に分析するが、作戦の研究は軍事的観点に絞って部隊の運用を分析するところに特徴がある。また、作戦は統合運用の観点からも重要な意味を持つ概念であり、作戦目標や作戦基地といった作戦に関する概念は、異なる軍種間の連携を考察することを促す。戦前にはドイツ、戦後にアメリカの研究を移転した日本においては、この作戦概念の受容があまり進んでおらず、旧陸軍では「師団以上の部隊の対敵行動の総称」という認識に止まっており、陸自においても「防衛目的を達成するための行動」として理解されているにすぎない。ただし、最近になって改めて作戦に対する理解を深め、研究の深化が必要だと主張する研究が出ており、研究動向にも変化が見られる。
陸自1:一般に、防衛目的を達成するための行動をいう。戦闘をも含めて使用する。
陸自2:諸職種連合部隊が、直接侵略事態、間接侵略事態等において、与えられた任務を遂行するための数正面又は一正面における一連の行動をいう。
陸自3:情報、通信、人事、兵站等の機能と並ぶ作戦・戦闘の機能をいう。
海自1:広義には、自衛隊が与えられた任務達成のために遂行するあらゆる軍事行動をいう。
海自2:部隊がある目的を達するまでの、捜索、攻撃、防御、移動、機動等及びこれに必要な補給活動を含む一連の戦闘行為をいう。
空自・統合1:広義には、軍隊(自衛隊)が、与えられた任務達成のために遂行するあらゆる軍事行動(防衛行動)をいう。
空自・統合2:狭義には、ある目的を達成するまでの一連の戦闘行動をいう。捜索、攻撃、防御、機動等及びこれに必要な後方活動を含む。
旧陸:通常戦略単位以上の大兵団を以てする対敵行動の総称にして、集中、機動、戦闘及びこれに必要なる情報、警戒、交通、補給、衛生等の一切を総称する。「主作戦」とは国軍又は某独立軍がその主目的の遂行に充つる作戦を言い、「支作戦」とは副目的に充つる作戦を言う。
NATO1:軍事的活動、すなわち戦略上、戦術上、戦務上、訓練上もしくは管理上の軍事的任務を遂行することをいう。
NATO2:戦闘または戦役の目標を達成するために必要な移動、補給、攻撃、防御及び機動を含む戦闘遂行の過程をいう。
ソ連:野戦軍または統合組織が所命の目的を達成するために作成した、各部隊および艦隊が行なう目標、時期、場所が十分に調整された総合的な核打撃および戦闘行動である。
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