アル・アンサリ

アル・アンサリ

ウマール・イブン・イブラヒム・アル・アウシ・アル・アンサリ(Umar Ibn Ibrahim al-Awsi al-Ansari, 14世紀?)は軍事著述家である。出身、家系、経歴などは明らかではないが、イスラーム世界の戦争術を調査し、その成果を書き残したことで知られている。

研究業績

アル・アンサリの著作『戦争の遂行における災いの取り除き方(Tafrij al-Kurub fi Tadbiral-Hurub)』は、当時の戦争術について調査した成果であり、特に諜報に関する記述は包括的かつ具体的である。この著作は全部で20巻から構成されており、その第1巻で戦略と戦術が議論されているが、残りのほとんどの議論が戦術について議論している。例えば、11巻から12巻にかけては部隊の行進、13巻では夜襲のように、それぞれの巻ごとに異なる主題が取り上げられている。

興味深いのは、アル・アンサリが可能な限り敵との戦闘を避け、策略によって勝利を収めることを戦争術の基本原則と見なしていることである。もし戦闘を行わなければならないとしても、絶えず防御の立場に回ることも推奨されており、防御戦闘の優位性が強調されている。その他にも、敵同士を反目させるための謀略が解説されるなど、アル・アンサリの著作においては武力戦を最小限に留めて犠牲を抑制すべきという主張が数多くみられる。これらの記述は当時のイスラーム世界における戦争術を理解する上で興味深い示唆を与えてくれるものである。

  • George T. Scanlon, A Muslim Manual of War, Cairo: The American University in Cairo Press, 1961(2012).