イブン・シャッダード

イブン・シャッダード

バハー・アッディーン・イブン・シャッダード(Baha' ad-Din ibn Shaddad 1145年3月5日 - 1234年11月8日)はアイユーブ朝に仕えた法学者、歴史家であり、第三回十字軍の戦争史に関する著作を書き残した功績で知られている。

経歴

モスルの出身。現地で基礎教育を受けてからバグダッドのニザーミーヤ学院(ニザーム・アルムルクによって創設)で法学に打ち込んだ。ニザーミーヤ学院では助教授になり、1173年に教授としてモスルへ戻った。1188年にアイユーブ朝の創始者サラーフ・アッディーンに招聘され、法務官として従軍した。これはサラーフ・アッディーンが十字軍から奪取したばかりのエルサレムを防衛するための戦備を整える最中の出来事だった。実際に第三回十字軍が侵攻を開始すると、イブン・シャッダードは開戦から終戦に至るまでの戦争の経過を目撃することになり、サラーフ・アッディーンを側近として補佐した。1193年にサラーフ・アッディーンが死去してからシリアのアレッポで裁判官になり、同地で死去した。

著作

主著は『サラーフ・アッディーンの類まれで卓越した歴史(an-Nawadir as-Sultaniyya wa l-mahasin al-yusufiyya)』(1228)であり、英語の翻訳で読むことが可能である。中世のイスラーム世界のみならず、ヨーロッパ世界の軍事史を知る上でも貴重な研究資料である。

  • ibn Shaddād, Bahā' ad-Dīn. 2002(1228). The Rare and Excellent History of Saladin. trans. Richards, D.S., Ashgate Publishing.