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射撃と運動(fire and movement)は、戦闘部隊を戦術的に運用するときに適用される基本原則の一つであり、敵に対して射撃と運動を連携させる方法を導き出すことができる。射撃は敵の動きを妨害し、その戦闘力を低下させるように火力を使用して味方の個人または部隊を掩護することを意味する。運動は地形を利用して敵火を避けつつ、自らの位置を変えることを意味する。射撃と運動を組み合わせることで、戦闘部隊は任務遂行を容易にすることができる。
射撃と運動という考え方は戦争の歴史を通じて発展してきた。古代の戦場では、弓矢、投石器、投槍などによって敵の陣形を攪乱し、歩兵や騎兵の前進や突撃を支援する戦術が用いられた。近代の戦場では砲兵の火力が歩兵や騎兵の突撃を支援する目的で運用されるようになり、第一次世界大戦では、敵の塹壕に歩兵が突撃することを支援する目的で砲兵の火力が活用された。同時に、歩兵部隊で使用する武器も小銃、迫撃砲、擲弾、機関銃、手榴弾など多様化し、小隊や分隊ごとに射撃と運動が実施されるようになり、現在の射撃と運動の原型が確立された。
戦闘において射撃と運動を応用する場合、職種部隊で戦い方が異なる。歩兵小隊の戦術行動では、小隊長が2個以上の分隊を指揮するが、その際にどの部隊を戦場で機動させ、どの部隊で射撃を実施して味方の運動を掩護するのかを決定しなければならない。戦車小隊の運用でも、戦車が敵火に晒される場所を通過しなければならない場合は、前進する車両を掩護するために、射撃が可能な位置に別の車両を配置することで射撃と運動に沿った連携を行う。射撃と運動を成功させるためには、指揮官は状況に適した射撃号令を実施し、味方の部隊が脅威に対して無防備な状態にさせないことが必要である。
U.S. Department of the Army. 2007. Field Manual 3-21.8: The Infantry Rifle Platoon and Squad, Washington, D.C.: U.S. Department of the Army.