トリアンダフィーロフ

トリアンダフィーロフ

ウラジミール・キリアーコヴィチ・トリアンダフィーロフ(Vladimir Kiriakovich Triandafillov, 1894年3月14日 - 1931年7月12日)はロシアの軍人である。戦略の問題は個別の作戦を指揮することにあると主張し、作戦術の体系化に努めたことで知られる。

経歴

カルス州マガラジク村の出身。ギリシャ系の家に生まれ、神学校で教育を受けた。1914年に第一次世界大戦が勃発した際に徴兵されて陸軍に入ったが、間もなく選抜で士官候補生として教育を受けることになった。1915年、モスクワの陸軍士官候補生学校を卒業し、指揮官としての経験を積んだ。

1917年に社会革命党に入党し、臨時政府を打倒する際には提携するソビエトの権力奪取を支持した。講和をめぐって社会革命党とボリシェヴィキが路線対立を起こすとボリシェヴィキの支持者に転じ、ロシア内戦が勃発すると赤軍に加わった。赤軍では旅団の指揮をとり、1919年に共産党に入党した。

1923年に陸軍大学校を卒業してから参謀本部第一局長に任じられ、作戦計画の立案や評価に従事した。参謀本部次長に就任したが、1931年にキエフ特別軍管区の会議に出席するため航空機で移動していた際に事故で死去した。

著作

トリアンダフィーロフの主著として『現代の軍事作戦の特性(Характер операцій сучасних армій)』(1929年)が挙げられる。これは将来の戦争を見据え、機動的な縦深戦闘に準備する必要を唱えた著作として高い評価を受けた。

トリアンダフィーロフは科学技術の発達に伴って火器の射撃速度や射程がますます向上し、将来の戦争では第一次世界大戦で見られた塹壕戦のような戦い方ではなく、機械化された部隊による機動戦になるはずだと予想した。そのため、攻勢をとるとしても、防勢をとるとしても、縦深戦闘力を発揮することが戦略的に重要である。単に敵の防衛線を突破する際にも、連続的に敵の後方へ進出して縦深突破で敵の戦闘部隊だけでなく後方支援部隊も含めて完全に殲滅し、反対に防衛線を突破された場合には敵の攻撃前進を上回る速度で退却して、包囲殲滅されないようにしなければならない。

トリアンダフィーロフは1920年代に陸軍大学校の教官を務めていた陸軍軍人アレクサンドル・スヴェーチン(1878 - 1938)の影響を受け、彼の作戦に対する考え方を発展させたものとして評価されており、ミハイル・トハチェフスキー(1893 - 1937)やゲオルギー・ジューコフ(1896 - 1974)の思想にも影響を及ぼした。

著作については日本語の翻訳が見当たらないものの、英語には翻訳されている。

  • Тріандофіллов, В. К. 1936(1929). Характер операцій сучасних армій. 3-тє вид, Госвоеніздат.
  • Triandafillov, Vladimir Kipp. 1994. The Nature of the Operations of Modern Armies. Cass Series on the Soviet Study of War, 5, Trans. Routledge, 1st edition, 1994